Webサイトを自社で更新できるようにすること(CMS化)のメリットを考える。

はじめに

「Webサイトを自社で更新できるようにしたい」というご要望はとても多いです。
いわゆる「CMS」を導入することです。
「Contents Management System:コンテンツ・マネジメント・システム」の略で、簡単に言うとWebサイトを構成する文章や写真などを更新できる仕組みのことです。

ご要望が多い理由としては
・文字を直すなど、簡単な修正なら自社でやったほうが圧倒的に早い
・サイトの修正・更新費用がかからない

などが挙げられます。

しかし、当社では下記の理由により、更新システム導入(ここではCMS化とよびます)はおすすめしておりません。
お客様にとってそのメリットが最大限に活用されづらい事例を多く見ているためです。

初期制作の工数(費用)がかかる

当社における、CMS化の流れは下記のとおりです。

(1)まずはプレーンなhtmlとcssでWebサイトを作る
(2)その後に全コンテンツをCMSに入れ込む
(3)クローン環境を構築した上で、動作検証を行う
(4)必要に応じて操作マニュアル等の作成

という流れになり、(2)以降の工数が「純増」します。
(1)のみでWebサイトとして公開可能な状態になるためです。

(1)の工数が10だとすると、
(2)以降の工数は10〜15程度でしょうか。

WordPressというフリーのCMSを使うため、フルスクラッチでシステムを組むのと比較して安価にご提供できますが、
実に2倍以上の工数になります。クローン環境の維持費も発生します。

※データバックアップの意味でも、当社では必ずクローン環境も用意するようにしています。

ある程度の専門知識(HTMLとCSS)が必要になるため、デザイン性の維持が難しい

たとえ、かんたんな文章を追加するだけであっても、見た目を維持することは非常に難しいです。

・文字の大きさ
・フォント
・改行位置
・行間の幅
・写真の配置方法、大きさ、トリミング

など、読みやすさは多くの要因によって決まるからです。

上記を整えずに文章を追加すると、まるでWord文書が挿入されたような感じになり、見た目の維持が困難です。

例えば下記は、当社のサイトの一部分ですが、実際の記述内容はこのとおりです。
どこかを間違えると、レイアウト乱れが発生したり、正しく表示されなくなります。閉じ括弧が1つ抜けていただけで乱れる場合があるため、原因特定にも時間がかかります。

■HTML部分

■CSS部分(抜粋)

実はそれほど更新は必要なかった

CMS化したサイトを作っても、それほど更新が必要なかった、というケースも多いです。
”とっさに「ここを直したい」と思ったことがあったので、自社で更新できると便利に思ったが、実際にCMSを導入してもサイトを直すのは年に数回程度。初期費用を考えると普通に作るので十分だったな”
というお声を頂いたこともあります。

編集システムが関与することで、サイトの自由度が極端に低下する

全ページ、システム的に雛形化されてしまうため、雛形から逸れた例外的な修正をしづらくなります。

「この部分に、こういう項目を入れたい」
「このページに限り、こういう文章を入れたい」といった、本来は簡単に対応できることが、困難になる場合があります。

CMS化が大きな足かせになる

更新担当者が退職してしまった場合のリスクも生じます。
新しい担当者への教育・引き継ぎがうまく行かなかった場合、外部に保守を頼むことになり、
一般的なHP更新よりも、CMS化による工数増が発生しますので、その費用が割高になります。

まとめ

CMS化は、お客様にとって便利で得が多いと思われがちですが、上記のようなリスクが伴います。
当社でも過去に何度かCMS化したサイトをご提供したことがありますが、殆どの場合でそれを活かしきれなかった、という結果になったため、この記事を作成しました。

CMSに向いているのは
・ECサイト
・不動産情報など、雛形で済む内容がほとんどを占めるWebサイト

など、超画一化された情報を無数に出したい場合のみ、と私たちは考えています。
弊社では事前に起こりうるデメリットをご説明をしてから、CMS化をご検討されるようにしています。

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