素晴らしき「脱SEO」- Google検索順位に振り回されないための考え方

はじめに

「SEO対策」という言葉をご存知でしょうか。
エスイーオー対策と読みます。「Search Engine Optimization」の頭文字でSEOです。
簡単に言うと「Googleなどの検索で、自サイトを検索結果の最初のほうに表示させる」ための試みを指します。
例えば弊社だったら「一関 ホームページ制作」、歯科医院であれば「一関 インプラント」などで検索されたときに、自サイトが最初のほうに表示されれば、集客・集患に有利に働きますが、この競争が過熱しすぎたため、やや困った問題に陥りがちなのがSEO対策です。
そして「脱SEO」とは、文字通りSEO対策から開放されよう、という当社の方針なのですが、その理由をお伝えします。

なぜ当社は「脱SEO」の方針なのか

1つ目の理由は、検索順位の維持や回復は非常に難しく、お金と時間がかかるためです。
どのHPもSEO対策を重要視するので、当然のことながら競争が起きます。
Googleの検索結果は頻繁にアップデートが実施されるため、先日までは自分のサイトが1位表示だったのに、いきなり30番目くらいに急降下した、という現象も頻繁に起きます。
順位を回復する確実な方法がなく、情報収集と試行錯誤に労力がかかるのです。

2つ目の理由は、SEOを意識しすぎることで、不自然で使いづらいWebサイトになってしまうことがあるためです。
例は後述します。
「閲覧者に有益な情報を提供する」のがWebサイトの本質的な役割ですが、検索順位が良くないと多くの人の目に届かないため、強引な手を使ってでも順位を上げたい、という心理が働きます。
なので、当社では「脱SEO」を基本方針としています。(SEOの手を抜く、という意味ではありません。過度にSEOは意識しない、ということです)

脱SEOをすすめる理由1、時間とお金がかかる

SEOにはいくつか定石的な手法が存在します。

  • titleタグに目標キーワードを入れ込む(2個までが望ましい)
  • h1タグにも目標キーワードを入れる(これは1つに絞ると良い)
  • meta keywordsは、3個から5個くらいの単語を入れる。それ以上、多数キーワードを入れると逆にデメリットになり得るので、言葉は厳選する
  • 本文は1ページ2,000文字くらいあるとよいとされるので、作文する
  • 本文中に占めるキーワードの割合は5〜7%くらいに調整する
  • いろいろなページを巡回してもらいやすい作りにする
  • 単純にページ数を増やす(ブログ記事も有効)

などがよく言われるものです。
要は「Googleの検索システムに好まれるようにWebサイトを直す」ということです。
試行錯誤を繰り返すため、比較的長期で様子を見る必要があります。そして、懸命に上記の修正を行ったとしても、順位が回復しないことがあるのです。
「こうすれば検索の上位に表示され続ける」と言い切れないのがSEOの怖さであり、いつまでも仮説検証を繰り返し続けることになります。
時間とお金がかかります。

脱SEOをすすめる理由2、人間から見ると不自然・不便になりがち

順位が安定しないとしても、予算があるならSEO対策はやり続けても良いのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。これはごもっともな指摘ですが、当社の考え方を紹介します。
SEO対策とは「Googleシステムに好まれるようにサイトを作る」作業と言えるので、意識しすぎると人間から見れば不自然な作りになります。
いくつか例を紹介します。

キーワードを気にしすぎて、地名だらけの文章になってしまう

「目黒 歯科」という言葉で上位検索されることを意識しすぎると、文章がその言葉だらけになりがちです。

目黒にあるベルキーファ歯科は、歯科医院として目黒の地域医療に貢献するため、目黒の患者様に良質な歯科診察を提供します。
桜で有名な目黒川にも近く、目黒駅や中目黒駅、目黒線の不動前からも徒歩でベルキーファ歯科に来ることができます。立地条件の良い歯科医院です。

極端にいうと、上記のような文章ができあがります。言いたいことはわかりますが冗長すぎます。
Googleのシステムはかつて「これは目黒で重要な歯科医院HPかもしれないから検索上位に置こう」と判定していました。
しかし、この傾向を逆手に取った、特定語句を無数に入れた読みづらいHPが検索上位を占めるようになり、Googleも判定方法を徐々に変更するようになりました。
不自然な文章のホームページは検索に引っかかりづらく調整されたのです。

「地名キーワードをたくさん入れる」→「キーワード量を調整しながら試行錯誤を繰り返す」→「順位が上がる」までは良かったのかもしれませんが、それが原因で下がってしまっては元に戻さなければなりません。そこでも工数がかかります。
また、最近は見ませんが「当社の対応地域」などと書いて、地名を羅列したものもこれにあたります。
都道府県名や細かい地名が下の方に小さく書かれたWebサイトを見たことはないでしょうか?
これもSEO対策を意識しすぎた例です。

ページを細かく分割してPV数(閲覧回数)を稼ぐ

PV(ページビュー)数が多いと、Googleから良いHPであると判定されることがあるため、無理やり「次のページへ」と分割してページ数を稼ぐHPが横行した時期がありました。大手のニュースサイトなどで見たことがある方も多いと思います。
同じページに全部掲載すれば良いものの「SEOに良いらしい」ということで、閲覧者の利便性を犠牲にして、これを導入するのです。HP修正費用もかかります。
無駄にページ遷移を強いられると面倒と感じる人もいるでしょうし、スマホ閲覧だと余計な通信費と読み込み時間が生じます。離脱してしまう閲覧者もいることでしょう。本末転倒です。

よそのHPから自分のHPを紹介(リンク)してもらう

Googleには「リンクを集めるWebサイトは良質である」という考え方があります。これは私たちもとても理にかなっていると感じます。
たとえば美味しくてお洒落なアイスクリーム店があれば、ブログやSNSでアイスの写真と店情報が拡散されます。それを見た人が自分のブログからリンクをはることもあるでしょう。
自然発生的に口コミが広がることはとても良いことですし、Webの特徴的利点の一つです。

ただ、またもやこれを逆手に取って「あなたのHPにリンクをします」というサービスが流行し始めたのです。
いわゆる「被リンクサービス」というものですが、「毎月たったの10万円で、約3,000のHPからリンクを飛ばします」というものもあり、とんでもない過熱ぶりです。いまでもこの類のサービスは検索すれば見つかるはずです。

一時期、芸能人のブログで問題になった「ステマ」も似たようなものです。欺く相手がGoogleの検索システムか、ブログ読者かの違いでしかありません。
この手法も最初はGoogleをうまく騙せて、被リンクサービスを受けたHPが上位表示されるようになったのですが、検索システムの精度が高まって「このようなリンクサービスを使っているHPは、順位を低下させる」ようになりました。

被リンク業者はリンクすることは早くても、外すのに時間がかかってしまったり、申し込んだサービスが停止していて被リンク解除ができない状態になると、いつまでも順位低下の要因として残り続けてしまいます。
解決できずに自分のHPを作り替えてリンク関係を外す方法を余儀なくされた例もあります。

サイトの規模を高めるため、ページを量産する

「規模が大きいサイト=よいサイト」という判定基準があります。
Webサイトの規模(ページ数)が大きいほどSEOに好影響を及ぼす、ということで、スタッフさんによるブログをサイト内に設けることが流行った時期がありました。ブログは1記事につき1ページ増える仕組みであり、しかもスタッフさんが書くのであれば、それほど費用もかかりません。
また、例えば弁護士事務所だったら「法律用語集」など、専門用語1つにつき1ページで説明するような工夫もあります。

ただ、またこのGoogleの性質を利用して、コピペ文章で安易にページ量産したサイトが検索上位を占めるようになってしまったのです。

Google判定にも調整が入り、主業務に関係が薄いページが大量にあった場合は、順位を下げるような傾向に変わりました。
HPのいろんな箇所に入れ込んだコピペ文章を削除しなければなりません。

SEOを優先する?ブログを優先する?

同じような「ページ量産型」の例として、スタッフブログを運用されていた当社顧客HPの話を紹介します。
なぜか急に検索順位が低下したので、調べたところ「主業務に関係の薄いページが大量にあると、検索順位が下がるらしい」ということがわかりました。

専門的なサービスを展開するこの企業、スタッフさんが日記的なブログをたくさん書いたところ
・専門的なサービス紹介ページ:10P
・スタッフブログの記事数:800P
くらいのバランスになり、Googleに専門性の低いHPと判定されてしまったようなのです。

そこでブログ記事すべてを削除(非表示処理)したところ、ほどなくして順位が回復しました。

これは「SEO的にはうまく解決できた」と言えるのかもしれませんが、そのブログをいつも楽しみにしていた方々の訪問を失うことになり「順位は回復したが閲覧人数は大幅に下がった」という、なんとも言えない結果となりました。

※別にスタッフ専用サイトを構築して問題解決ができました。

ブログ記入が業務になり、書くのが辛い

上記の例は、ブログを書くのが上手なスタッフさんがいたこともあって、「会社ブログを楽しむ文化」ができあがっていましたが、他方での「ブログ運用が招いた問題」をご紹介します。
「社長に、持ち回りで週1のブログ投稿を指示され、文章を書くのが苦手な私たちにはとても辛い。書かないと怒られるし」といった相談を、支援先企業のスタッフさんから受けたことがありました。

ブログを見てみると、仕方がないことなのですが、やらされてる感のある記事が多く「書く人は辛いし、見る人にも有益とはいいづらい。おまけにSEO順位が下がった」という誰も得しない状態に陥っていました。
ブログ運用を一時停止するようお伝えはしましたが、これもSEO加熱が生んだ負の要因と感じます。
私たちが「脱SEO」という方針を設定したのも、これらのブログの件が大きく影響しました。

行き過ぎたSEO検索順位争いのため、

  • 「スタッフさんがコツコツ頑張って書き続けたブログがお蔵入りになり、それを見るお客様の楽しみも減った」
  • 「ブログ記入を指示されたスタッフさんに大きな負担がかかっていた」

と私たちには感じられました。

SEO対策をせず、どうやって閲覧を集める?

私たちの方針は「SEO対策を全く行わない」ということではありません。
上に書いたタイトルタグや、hタグ等を適切に使うことは言うまでもありませんが、そのほか一通りの対策は行います。
ここで言う脱SEOとは 「大きなキーワードで上位表示を狙うSEO対策は工数がかかるため、良質な記事を定期的に公開して、もう少し小さなキーワードで閲覧を集めよう」という主旨です。

例えば「とある地名 + ホームページ制作」の検索結果は約160万件ありますが、「地名 + 業種 + ホームページ制作」と、1段階下げた場合は約60万件と、競合の数が1/3に減ります。
小さな検索語句のほうが上位表示されやすく、さらには自社の顧客となる可能性が高い検索者へピンポイントに訴求できる長所があります。Googleの検索結果変更に慌てることもなくなります。

まとめ

SEOという言葉が一般化する2010〜2015年くらいまでは、小手先のテクニックで上位表示が実現できていました。「こうすれば検索が上がる」という方法がいくつか存在していたのです。
SEOとはGoogleの検索システムの性質をかいくぐって検索上位を実現させる手法でもあるため、常にいたちごっこが続きます。
対策をやりすぎると逆にデメリットにもなり得ます。
そして、人間から見ると「使いづらくて、そんなにおもしろくないWebサイト」になってしまう可能性があるのです。
ですから当社は「検索順位は大切ではあるが、過度なSEO対策は行わない」という方針のもと、小さなキーワードでたくさん閲覧してもらえる人の心に届くWebサイト制作を目指しています。

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